昔々、あるところにとてもかわいいウサギちゃん(ブラウンタイプ)がいました。
ウサギちゃんにはたくさんの仲間と、大好きなお友達がいました。
そのお友達は、ウサギちゃんにとてもかわいい名前をつけてくれました。
ウサギちゃんはその時からただのウサギちゃんではなく、世界でたったひとりのかわいい名前のウサギちゃんになりました。
ウサギちゃんがお友達のことを大好きだったように、お友達もウサギちゃんのことが大好きでした。
お友達はウサギちゃんをそれはそれは大切にしていました。
ウサギちゃんはそんなお友達と遊ぶ時間が大好きでした。
でも。
お友達に新しい人間のお友達ができて。
学校に行く時間が増えて。
家に帰ってきても机に座ってばかりになって。
ウサギちゃんと遊ぶ時間は減っていきました。
それでもウサギちゃんはおもちゃ箱の中で、お友達とまた遊べる日を楽しみにしていました。
お友達の髪が伸びて、背が伸びて。
仲の良さそうな男の子と部屋で勉強をしている日も、
お友達のお母さんとお友達が喧嘩をして、お友達が泣いていた日も。
ウサギちゃんは応援しながら、お友達を待っていました。
部屋にお友達が帰ってこなくなっても、ずっとずっと待っていました。
「わぁ、懐かしい!…お母さん、こっちもいいよ」
どれほど待った頃でしょうか。大好きなお友達の声がして、久しぶりにおもちゃ箱から出ることが出来ました。
大好きなお友達は大きくなって、胸には小さなお友達を抱いていました。
あぁ、そうか。お友達にもたくさんの仲間ができて、これからはお友達が遊んであげる番なのね。
ウサギちゃんは大好きなお友達が小さなお友達を一生懸命あやしているのをみて、昔のように応援をしました。
それからウサギちゃんは旅に出ました。大好きなお友達に別れを告げ、また新しいお友達を探す旅に。大好きなお友達の思い出を胸に抱いて。
箱を乗り継ぎ、乗り物を乗り換え、仲間たちとも別れを繰り返しながら。
そうしてたどり着いたお店の隅っこ。疲れ身体を休めるようにひっそりと佇んでいた時のことでした。
「ーーー!!この子すごいきれい!かわいい!」
とても賑やかな声と共に、ウサギちゃんは連れ去られ、気がついたら見知らぬお部屋に来ていました。ここはどこだろう。
「やぁ、新入りさんかな。ここはシルバニア村。おみちゃんと愉快な仲間たちが暮らす村だよ」
ここには新しいお友達がいるようです。わたしともたくさん遊んでくれると嬉しいな。
✱✱✱
耳を澄ますと、そんなお話が聞こえてきました。
これからよろしくね、ウサギちゃん。もちろん、たくさん遊びましょ。